候補アーティストの紹介

青柳菜摘

東京都生まれ。東京藝術大学大学院映像研究科メディア映像専攻修了。主な展示に「彼女の権利 ─ フランケンシュ タインによるトルコ人、あるいは現代のプロメテウス」(NTTインターコミュニケーション・センター[ICC]、2019)、第10回恵比寿映像祭(東京都写真美術館、2018)等がある。2022年9月より「亡船記」(十和田市現代美術館サテライト会場 space)開催予定。プラクティショナーコレクティヴであるコ本やhonkbooksを主宰。

「現在の私たちの世界は、様々なメディアによって記録され、ログが残されている。青柳菜摘の作品は、そうした非人間的な視点の存在を意識しながらも、日々の小さな変化を捉えるきわめて個別的な感覚をどのように残すことができるかを主題としている。蝶の孵化のような小さな変化をどのように捉え、自分のものとすることができるのか、あるいはそれは不可能なのか。彼女の作品は、現在の世界状況に敏感に反応しつつ、人間らしい血の通った営みを、日々どう刻印していくかという試みの連続である。」 - T.Y.

作品

藤倉麻子

埼玉県生まれ。東京外国語大学南・西アジア課程ペルシア語専攻を卒業後、東京藝術大学大学院映像研究科メディア映像専攻を修了。都市・郊外を横断的に整備するインフラストラクチャーや、それらに付属する風景の奥行きに注目し、主に3DCGアニメーションの手法を用いて作品制作をおこなっている。2021年からは物流と庭に関するリサーチプロジェクト「手前の崖のバンプール」を主宰し活動を展開している。主な個展に「Paradise for Free」(Calm & Punk Gallery、2021)。主なグループ展に「多層世界の中のもうひとつのミュージアム──ハイパー ICC へようこそ」(NTT コミュニケーションセンター[ICC]、2021)、「Back Tokyo Forth」(東京国際クルーズターミナル、2021)など。

「首都圏近郊の工業地帯に生まれ、開発途上にあるインフラの構造物が林立する風景のなか で育った藤倉は、その原風景をもとに、3DCGアニメーションによる、極彩色の空間のイメージを制作する。無人の空間に、独自の動きを持つ高速道路や下水道など都市のインフラの断片が配された風景は、彼女にとっては自然と人工物、人間と非人間を超えた、原初的な風景のイメージであり、人間の限定された生から私たちを解放してくれる、奥行きを持った楽園のヴィジョンである。」 - T.Y.

作品

長谷川愛

静岡県生まれ。岐阜県立国際情報科学芸術アカデミー(通称 IAMAS)にてメディアアートとアニメーションを勉強した後ロンドンへ留学。英国Royal College of Art, Design Interactions 専攻、MA修士取得。2014年から2016年秋までMIT Media Lab, Design Fiction Groupにて研究員、2016年MS修士取得。2017年4月から2020年3月まで東京大学特任研究員。2019年から早稲田大学非常勤講師。2020年から自治医科大学と京都工芸繊維大学にて特任研究員。アーティスト、デザイナーとして活躍中。

「長谷川愛は、バイオアートやスペキュラティヴ・ デザイン等の手法をもとに、生物学的課題や科学技術の進歩をモチーフとして、よりよい未来へ向けた提言の形をとる実験的な作品を多数発表してきた。それらは、愛や生殖など他者との関係の諸条件についてユーモラスに言及しつつ、 ジェンダーやカタストロフなど、現代社会に潜む諸問題への鋭い批評となっている。」 - T.Y.

作品

石原海

東京都生まれ。東京藝術大学先端芸術表現科を卒業、英国ゴールドスミスArtist’s Film専攻を現在休学中。ジェンダー、個人史と社会を捉えながら、フィクションとドキュメンタリーを交差させた映像を中心に作品制作をしている。主な個展に「重力の光」(資生堂ギャラリー、2021)、「頭のいかれた悪魔の泥沼」(TAV Gallery、2017)。主な上映に『重力の光』第14回恵比寿映像祭(東京都写真美術館、2022)、初長編映画『ガーデンアパート』、短編映画『忘却の先駆者』(ロッテルダム国際映画祭、2019)。主な助成に英国テレビBBC/BFI『狂気の管理人』監督(2019)、リクルート財団(2018〜2020)。ポーラ美術振興財団(2023)。主な受賞に現代芸術振興財団CAF賞、岩渕貞哉賞(2016)。

「石原海は、個人史にのっとったパーソナルな関係から出発しながら、ジェンダーや貧困などの社会について思考してきた。代表作として、貧困に陥った人たちを救済する教会を舞台に、家族にも地域社会にも居場所のない人たちとともに生活しながら、彼らをモチーフに新しい共生と生き方を模索する作品『重力の光』がある。」 - T.Y.

作品

渡辺志桜里

東京都生まれ。中央大学文学部仏文学専攻卒業。東京藝術大学大学院美術研究科彫刻専攻修了。主な展示として「Dyadic Stem」(キュレーション・高木遊、The 5th Floor、2020)、「ノンヒューマン・コントロール」(TAV GALLERY、2020)、 「ベベ」(個展、キュレーション・卯城竜太(Chim↑Pom)、White House、2021)がある。

「渡辺志桜里は、外来種や純血種、絶滅種など、生物環境と人間社会との摩擦を暗示するモチーフを主題とし、人種問題や天皇制、人間が絶滅した後の未来のヴィジョンなど、多層的なメタファーを鑑賞者に喚起させる作品づくりをおこなってきた。代表作として、皇居の生態系を再現、維持し、循環させて部分的に切り取りながら株分けしていく『Sans room』がある。」 - T.Y.

作品